火災保険の契約をする場合、保険の対象となるのは建物と家財です。そのうち家財の補償(家財保険)は、家電や家具1つ1つではなく、家財一式をひとまとめにして補償の対象にします。ただし、それとは別に申告しなければ補償対象とならないものもあり、それが明記物件です。
ここでは、明記物件とは具体的に何か、明記物件で補償を受けるためにはどうすればよいか、などを紹介していきます。
目次
1. 火災保険の対象となる明記物件とは?
火災保険は、補償対象が建物と家財に分かれます。このうち家財の補償(家財保険)を付けていれば、家具や家電、衣類、寝具などの家財に損害があった際に保険金を受け取れます。しかし家財のうち明記物件と呼ばれるものに限っては、あらかじめ契約時に保険申込書で保険会社に申告していないと、補償の対象には含まれないことになっています。
一般的に明記物件とは、以下のものを対象としています。
- 1つまたは1組の価額が30万円を超える貴金属、宝石、美術品等
- 稿本(本などの原稿)、設計書、図案、証書、帳簿など
火災保険で家財の補償に加入する際には、世帯主の年齢や家族構成などで評価額を算出し、家財一式の保険金を決めて契約します。明記物件がある場合は、家財一式の補償とは別に明記物件として申告し、保険金額を設定する必要があります。
なお、明記物件という名称を使用していない保険会社や、「1つまたは1組の価額が100万円を超えるもの」、などとしている保険会社もあります。
地震保険は火災保険とセットで加入するものであることから、火災保険で明記物件の補償を付けていれば、地震保険でも明記物件の補償が得られると思いがちです。しかし地震保険の対象となるのは、居住用の建物と家財(生活用動産)です。
生活用動産には明記物件に該当するものや、通貨、有価証券、預貯金証書、印紙、切手などは含まれません。これは、地震保険が「地震による被災者の生活の安定」を目的にしたものだからです。つまり、明記物件は地震保険では補償の対象外になっているということなので注意しましょう!
2. なぜ明記物件を申告する?
家財に対する補償は、その商品を新たに購入したときにかかる金額の新価で算定することが一般的ですが、明記物件の場合は時価で算出します。
時価とは、新価から使用による消耗分を差し引いた額を基準 としています。美術品や設計図などは鑑定評価が難しく、保険金額の設定が困難です。そのため明記物件を個別に申告し、その内容や保険金額を保険申込書に明記しておく必要があるのです。保険会社によっては、明記物件の金額を設定する際に、鑑定書や領収書の提出が求められる場合もあります。
高級時計や美術的価値のある楽器も明記物件となるので、そういったものを持っている場合は、申告を忘れないようにしましょう。
3. 明記物件で支払われる保険金について
明記物件の保険金額の設定方法は、保険会社によって異なります。
たとえば保険金額を100万円単位で設定でき、500万円、1,000万円と増額できる保険会社がありますし、破損・汚損による家財への損害に関しては30万円を限度額としていたり、理由に関わらず限度額を100万円としている保険会社があったりするなど、補償限度額についても扱いが異なります。
そのほかには、100万円までは家財保険で自動補償されるとしていたり、明記物件については別途特約を付けたりする保険会社もあります。繰り返しになりますが、明記物件の扱いは一律ではなく、保険会社によって大きく異なるのです。
保険会社別 明記物件の例
・保険会社T
1個または1組あたり30万円を超える貴金属等は、1事故あたり合計100万円を限度に自動的に補償。保険金額は500万円または1,000万円に増額も可能。
・保険会社J
1個または1組あたり30万円を超える貴金属等と稿本等は、1事故あたり合計100万円を限度に自動的に補償。貴金属・稿本等の合計金額が1,000万円以下の場合は、300万円・500万円・800万円・1,000万円から保険金額の選択が可能。合計金額が1,000万円を超える場合は、明記することで希望の保険金額を設定できる。
・保険会社M
貴金属等について1個または1組について100万円を限度に自動的に補償。家財明記物件特約を付けると、家財明記物件全体で1,000万円を限度に補償。
・保険会社A
貴金属等について1個または1組について100万円を限度に自動的に補償。家財明記物件特約を付けると、貴金属等に1個または1組について1,000万円を限度に補償。
・保険会社N
1個または1組あたり30万円を超える貴金属等と稿本等は、1事故あたり100万円を限度に自動的に補償。保険金額は500万円または1,000万円に増額も可能。
・保険会社S
1個または1組あたり30万円を超える貴金属等を補償対象に含める場合は「高額貴金属等」を選択。保険金額は100万円単位で設定。市場流通価額の合計が350万円以上の場合には補償に含まれない場合がある。
4. 明記物件と間違えやすいものは?
明記物件は、一般的に1つの価格が30万円を超えるものとされています。そのため、プラズマテレビやグランドピアノのような家電・家具があると、明記物件として申告しなければならないと思いがちです。
しかし明記物件の申告が求められるのは、「客観的に金額を査定するものが難しい家財」であるため、1つの価格が30万円を超えるものでも、再購入金額を算出することができる家財は、別途明記する必要はありません。
プラズマテレビやグランドピアノなどは市場価格がだいたい分かるので、明記物件に当たらないというわけです。明記物件に当たるのか迷った際には、保険会社に事前に確認すると安心です。
5. まとめ:明記物件の金額や補償内容は保険会社によって異なる
明記物件について紹介してきましたが、保険会社によって対応が異なり、申告が必要な明記物件の金額や、損害が生じた場合の補償額についても条件はさまざまです。明記物件に該当するような家財がある場合は、保険会社に連絡して明記物件の扱いについて確認しておきましょう。
貴重な高級品を持っていて、火事などで大きな損害を受けてしまったとき、明記物件として登録していなかったばかりに補償対象にならなかった…そんなことになったら、あまりにもショックです!火災保険(家財保険)を契約するときには、明記物件についての確認を忘れないようにしましょう!
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株式会社 回遊舎(編集・制作プロダクション)
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