火災保険の保険料は、どんな家でも同じではなく、対象となる建物構造(建物の主要構造部 = 柱、はり、外壁等)が何でできているかによって変わってきます。建物が共同住宅か一戸建か、耐火構造か非耐火構造かなどによって、燃えにくさなどに差があるためです。
火災保険を正しく契約するには、建物の構造級別を正確に把握することが必要になってくるのです!
目次
1. 火災保険で使われる「建物の構造級別」の内容とは?
建物構造は、木造・鉄骨造・コンクリート造といった建物の種類と、耐火建築物・準耐火建築物、省令準耐火建物といった法令上の建物の耐火性能から判断され、住宅物件の場合、M構造(マンション構造)、T構造(耐火構造)、H構造(非耐火構造)の3つのクラス(構造級)に分けることができます。
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- M構造
コンクリート造など耐火構造の共同住宅が該当します - T構造(耐火構造)
コンクリート造など耐火構造の戸建住宅、鉄骨造など準耐火構造の戸建住宅などが該当します - H構造(非耐火構造)
木造など非耐火構造の共同住宅、戸建住宅が該当します
- M構造
火災が起きたときに損害が大きくなるリスクは、耐火性に優れた建材で建築されているM構造がもっとも低く、次にT構造、そしてH構造がもっとも大きくなります。火災保険の保険料も、M構造だと比較的安く、H構造だと高くなることが多いです。
実際に、いくつかの保険会社でM構造、T構造、H構造の試算をしたところ、保険料はそれぞれ以下のようになりました。
【保険会社S社】
M構造:8万3,994円
T構造:21万8,260円
H構造:34万6,883円
【保険会社R社】
M構造:7万3,380円
T構造:17万8,290円
H構造:28万210円
【保険会社B社】
M構造:9万7,440円
T構造:18万3,760円
H構造:29万3,560円
*基本条件 2021年新築/東京都/100平米/補償範囲:建物・家財/補償内容:火災、落雷、破裂・爆発、風災、雹災、水災、水濡れ、外部からの物体の衝突など/保険期間:特に記載がないものは10年一括払い、免責なし/地震保険:なし
※M構造=建物の保険金額1,300万円/T構造=建物の保険金額2,500万円/H構造=建物の保険金額1,800万円、家財の保険金額はすべての構造で1,000万円設定(補償内容は各社で細かな条件が違うため、ここでの保険料はあくまで参考値です)
これらの結果からも、火災保険の保険料が「M構造<T構造<H構造」が多いということが分かります。
またここからは、建物構造の確認方法や確認する際のポイント、その注意点などについて、解説していきます。内容は少しマニアックなものとなりますが、引き続き読んでいただければ幸いです。
2. どの建物構造に該当するかの確認方法
住宅の建物構造がどの構造級に該当するのか、判別する方法について見ていきます。構造級は建築確認申請書から確認することができますが、建物の材質や耐火区分さえ分かっていれば、自分で判別することもできます。
フローチャート(下の図)を使って、確認してみましょう。
3. 建築確認申請書とは?
柱の材質と耐火区分さえ把握していれば、上記フローチャートを使って住宅の建物構造級を判定できます。しかし耐火区分となると、自分で把握していない人もたくさんいるでしょう。そこで確認したいのが、建築確認申請書です。
建築確認申請書とは、住宅を新築・増改築するときに、建築基準法・条例等に適合しているかの確認を受けるための申請書類です。建物構造は、この建築確認申請書の第四面から確認することができます。
4. 見落としがちな「省令準耐火建物」とは?
建築確認申請書の第四面【7. 建築基準法第61条の規定の適用】の欄を見ると、建物の耐火区分も確認できます。例えば、建物が耐火建築物の場合は、耐火建築物などと記載され、準耐火建築物の場合は、準耐火建築物などと記載されるので、確認してみましょう。
ただし省令準耐火建物の場合は、少し注意が必要です。というのも、建物が省令準耐火建物であるかどうかは、建築確認申請書上では確認できないからです。省令準耐火建物とは、建築基準法で定める準耐火構造に準ずる耐火性能を持ち、住宅金融支援機構が定める基準に適合する住宅のことになります。
住宅が省令準耐火建物であるかどうか確認するためには、設計仕様書や設計図面を見る必要があります。もしそこに省令準耐火、省令準耐、省令簡易耐火、省令簡耐といった記載されている場合は、省令準耐火に該当します。設計仕様書や設計図面が手元にない場合には、住宅を作った建築会社やハウスメーカーなどに問い合わせてみましょう。
省令準耐火建物ということを見落としてしまうと、本来はT構造であった住宅がH構造へと区分されてしまうおそれもあります。T構造とH構造では保険料が大きく変わってしまいますので、きちんと確認することが大切です!
5. 建築申請書から適用される割引を確認できる
建築確認申請書では、建物構造や耐火区分の他にも、さまざまな情報を確認できます。なかでも、第四面【12.外壁】に記載されている耐火・防火認定番号はチェックしておくとよいでしょう。耐火・防火認定番号の内容は以下のとおりです。
耐火・防火認定番号でとくにチェックした方がよいのは、耐火時間を表す3桁の数字です。外壁が一定以上の耐火時間を持つ場合、耐火性能割引が適用されて、保険料が安くなるからです。
耐火性能割引には、以下の2種類があります。
・T構造耐火性能割引 建物構造がT構造かつ外壁の耐火時間が60分以上
・H構造耐火性能割引 建物構造がH構造かつ外壁の耐火時間が45分以上
T構造の場合は「060」「120」の時に耐火性能割引が適用される可能性が、H構造の場合は「045」「060」「120」の時に耐火性能割引が適用される可能性があります。
火災保険料を少しでも安くできるのは嬉しいものです。この部分はぜひ確認してみてください!
6. まとめ:建物の構造を把握しておこう
建物構造は火災保険の保険料に大きく影響するため、しっかりと把握しましょう!基本的に「2.どの建物構造に該当するかの確認方法」で紹介したフローチャートと建築確認申請書を確認すれば、建物構造は自分で判定することができます。
省令準耐火建物かどうか迷う場合は、建築会社やハウスメーカーに直接問い合わせてみるのも1つの手です。建物構造がT構造もしくはH構造だった場合は耐火性能割引を受けられる可能性もあるため、耐火・防火認定番号も忘れず確認するようにしましょう!
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株式会社 回遊舎(編集・制作プロダクション)
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