今回は火災保険の基本補償のうち、水濡れ(みずぬれ)と騒擾(そうじょう)の補償について紹介していきます。どちらの補償も生活する中で意外と役立つ場面のある、頼もしい補償です。知らない人はぜひ学んでいってください。
目次
1. 水濡れ
まずは水漏れの補償について見ていきましょう。
水濡れとはどんなの補償?
火災保険における水濡れとは、給排水設備の事故や他人の戸室で生じた事故などによって、水漏れや放水が起こり、水濡れが発生してしまうことです。水濡れによって室内が水浸しになってしまうと、電化製品や家具も買い替えが必要になったり、床板や壁紙の張り替えが必要になったりします。火災保険の水濡れに対する補償は、そのようなケースに備えるものになります。
【水濡れの例】
・給水管が破裂して室内が水浸しになり、電化製品が壊れた
・天井裏の水道管が破損し水が漏れたため、壁紙を張り替えなければならなくなった
・マンションの上階が水漏れを起こし、自分の部屋の天井まで浸水した
どれも起こりそうな事故ですよね。火災保険の水濡れ補償は、このような身近なトラブルをカバーしてくれます。
水濡れの補償で対象となる損害は、自宅で起きたのか、自宅以外の戸室で起きたのかによっても変わってきます。
自宅での水濡れの場合、補償対象は給排水設備の事故に限られます。ここでの給排水設備とは、水道管や給水管、排水管、トイレの水洗用設備、雨どいなどのことを指します。
なお事故の原因となった給排水設備自体の修理代は、一部の保険会社を除いて火災保険の補償対象外となります。これらの補償をするのは「凍結水道管修理費用保険金」「水道管修理費用」といった特約や費用保険金ですが、保険会社によっては用意されていないこともあります。
対して自宅以外の戸室で生じた水濡れの場合は、原因が給排水設備でなくとも補償されます。自宅以外の戸室の水濡れとは、主にマンションやアパートのような集合住宅で、上の階の住人が起こした事故を指します。
水に関するトラブル全般を補償するものではない!
水に関する事故には、水濡れだけでなく自然災害によるものもありますよね。同じ「水」が原因となって発生している事故であっても、たとえば集中豪雨や台風などで床上浸水したり、土砂崩れが起きて住宅が流されてしまったりした場合は、水災補償の対象となります。
また、台風で窓ガラスが割れ、雨が吹き込み、家財が壊れてしまった場合などは、「風災・ひょう災・雪災」で補償されます。
いっぽう、地震を原因とした津波によって家が流されてしまったときについては、火災保険の対象となりません。この場合は、地震保険の対象となります。
2. 騒擾(そうじょう)
次に、騒擾について見ていきましょう。
騒擾とはどんな補償?
騒擾とは、群集または多数の者の集団の行動によって、数世帯以上の規模にわたり平穏が害されるか被害が生じる状態のことを指します。
【騒擾の例】
・自宅前の通りでデモなどの大規模な破壊行為が起き、自宅が大きく破損した
・グループ同士の闘争で自宅の塀が破壊された
騒擾では、住民への被害が数世帯にわたるようなデモや学生運動、暴力行為や破壊行為によって起きた破損や破壊が補償範囲になります。 暴力行為や破壊行為などによって必要になった処理、搬出にかかる費用も含まれる場合もあります。
騒擾の補償対象外になるのは?
なお、騒動と区別される暴動については補償の対象外です。暴動とは、群衆または多数の者の集団の行動によって、全国または一部の地区において著しく平穏が害され、治安維持上重大な事態と認められる状態のことです。
また暴動だけでなく、戦争、外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱に関しても、広範囲に補償対象が広がるためと、発生の予測ができないために補償範囲には含まれません。
3. まとめ:水濡れ・騒擾とも補償内容をしっかり確認しよう!
火災保険の水濡れ補償は、自宅で起きた場合は給排水設備の事故による損害のみが、自宅以外の戸室で起きた場合はそれ以外の損害でも補償対象となります。水濡れの可能性がありそうな設備が老朽化している場合は、なるべく早めに対応しつつ、思いがけない水濡れ事故には火災保険で備えましょう。
また騒擾の補償は、主に集団的な暴力行為やデモなどによって起きた被害を対象とします。不測の事態には、騒擾の補償で損害を補償しますので、大通り沿いや繁華街、スポーツ競技場に隣接するところに自宅や店舗がある人は安心ですね。
-
火災保険の基礎知識
-
水濡れ
-
騒擾
WRITER
株式会社 回遊舎(編集・制作プロダクション)
金融を専門とする編集・制作プロダクション。多数の金融情報誌、ムック、書籍等で企画・制作を行っています。保険、身近な家計の悩み、投資、税金、株など、お金に関する幅広い情報を初心者にもわかりやすく丁寧に解説します。