火災保険

公開:2021.12.28

更新:2022.06.30

必要に応じて付けたい火災保険のオプション補償

火災保険にはさまざまな特約があり、必要に応じてオプションとして付けることで、補償の幅を広げることができます。ただ商品説明を見ただけでは、どのようなときにどんな補償が得られるか分かり難いものです。この記事では、火災保険に特約で付けられるオプション補償について、代表的なものを紹介していこうと思います。

特約を付けることで火災以外のさまざまな備えに対応できる!

火災保険には、いくつかの補償がパッケージ化されたタイプと、基本補償をベースに自由に補償を付けられるタイプがあります。いずれの場合も特約を付けることで、補償を手厚くすることができます。

火災保険の商品タイプの別

補償を多く付ければそれだけ保険料も高くなるため、補償を絞ることは保険料の節約につながります。いっぽうで、火災保険は被害にあったときの経済的ダメージをカバーするために加入するものなので、必要な補償にはしっかりと加入しておくことが重要です。

しかし、たくさん種類がある補償のなか、必要なものだけを選択していくのは難しいと思います。以下で主な特約を紹介していきますので、それぞれの特徴を理解したうえで必要な補償について検討してみましょう。

1. ケガをさせたときやモノを壊してしまった際の補償「個人賠償責任特約」

他人にケガをさせてしまったり、他人のモノを壊してしまったりした結果、法律上の損害賠償責任を負担することにより、損害を被った場合の補償をする特約です。契約者本人だけでなく、家族が賠償責任を負うリスクにも備えることができます。

さらに示談交渉サービスが付いていれば、トラブル発生時の相手との交渉を保険会社に任せることができます。他の損害保険でこの特約を付けていなければ、ぜひ付けることを検討しておきたい特約のひとつです。

2. 建物や家財の復旧以外の費用を補償「臨時費用保険金補償特約」

火災をはじめ災害や事故にあってしまうと、自宅の修繕や家財を再取得する費用だけでなく、仮住まいの宿泊費などさまざまな費用がかかってきます。この特約は、損害保険金の支払い対象となる災害や事故にあった際に、臨時費用を受け取ることができるものです。

臨時費用保険金は、あらかじめ設定した損害保険金の10%程度(1回の事故につき1敷地内ごとに100万円が限度、など)が支払われることが多いようです。なお、保険金の使い道には制限がないため、ホテルの宿泊費のほか、仮住まいへの引越代、服や日用品などの購入費、職場までの交通費、ペットホテル代、家財を保管するトランクルーム代などに充てることができます。幅広い用途で保険金を活用することができるため、こちらもできれば追加しておきたい補償です。

3. 近隣へ火災が広がり損害が生じた際の補償「類焼損害補償特約」

日本は失火責任法により、自宅の火事が近隣へ燃え移り損害が生じた場合でも、故意や重大な過失でない限り、損害賠償責任が問われません。そのため法律上は補償する必要はありませんが、後々のことを考えると、何も補償しないというのは気がとがめるものです。この特約を付けていれば、近隣の建物に損害が生じてしまっても、修理費を補償することができます。

4. 類焼損害が生じた際に見舞金を補償「失火見舞費用保険金」

類焼損害特約と同様に、隣家などを類焼させてしまったときに保険金が払われるものです。類焼損害特約が損害に応じた補償をおこなうものであるのに対して、失火見舞費用保険金は損害額とは関係なく、一律の見舞金を支払うというものになっています。

5. 弁護士費用を補償してくれる「弁護士費用特約」

対象となる建物や家財が損害を受けたり、被保険者がケガをさせられたりしたとき、弁護士に相談する費用や、相手方に損害賠償請求をおこなう際の弁護士費用が補償されるというものです。支払われる保険金は、300万円程度を限度額とする商品が多いようです。

自動車保険で弁護士費用特約を付けている人も多いと思いますが、自動車保険では自動車に関わる被害事故に限定されているものが多いのに対し、火災保険では日常生活での被害事故を対象としています。いざというときの弁護士費用をカバーできるため、非常に心強い特約と言えます。なお弁護士費用特約は、契約者だけでなく家族も補償対象となるものが多いです。

6. 家財を外出先で破損した際の補償「携行品損害補償特約」

火災保険では家財も補償の対象とすることができますが、この特約を付けると外出先に持ち出した家財(携行品)が、偶然の事故で損害が生じた場合でも補償されます。保険会社によっては「持ち出し家財補償特約 」といった名称になっています。

例えば、デジタルカメラを旅行先で落として破損してしまったり、ゴルフのクラブを誤って折ってしまったりしたときに補償の対象となります。ただし、クレジットカードや定期券、自動車、自転車、メガネ、コンタクトレンズ、ノートパソコン、スマートフォンなどは、補償の対象外となるケースが多くなっています。 補償される金額の上限や損害額から引かれる自己負担額は、各保険会社や商品によって異なります。補償対象の範囲や保険金額について、事前に確認しておくとよいでしょう。

7. 他人から借りた物の紛失などを補償「受託物賠償責任補償特約」

他人から借りた財物(受託物)を壊したりなくしたりして損害賠償責任を負ってしまったときに、保険金が支払われるというものです。補償の対象には、レンタルした商品も含まれます。レンタルしたスキー板やスキー靴を破損してしまった場合や、サブスクリプションサービスで借りたブランドバッグを傷つけてしまったというケースなども、補償の対象となります。

最近では、個人賠償責任特約の補償範囲を他人から借りた物にまで拡大している保険会社や商品があります。加入を検討している火災保険ではどうなっているか、確認しておくのもよいでしょう。

8. 突発的な事故で建物や家財が壊れた際の補償「破損・汚損損害等補償特約」

火災保険に加入している建物や家財を、基本補償で補償されている事故以外でうっかり壊してしまった際に保険金が受け取れる特約です。

補償の対象となるのは、以下のような例が挙げられます。

  • ドアにモノをぶつけて破損してしまった
  • 机を運んでいて壁にぶつけて破損してしまった
  • 掃除中にテレビを倒して故障してしまった
  • 家具を移動中に落として壊してしまった

幅広い範囲で補償が得られるので、小さなお子さんがいるご家庭などではオプション補償として付けておくことをおすすめします。補償の対象となるのは、不測かつ突発的な事故により損害が生じてしまったときに限られます。また支払われる保険金は、一般的に損害額から自己負担額(1〜3万円程度)を差し引いた額となります。

9. 設備の電気的・機械的事故による損害を補償「居住用建物電気的・機械的事故補償特約」

補償対象となる建物と一体化している空調設備や電気設備などが、電気的・機械的な事故で故障した際に、その損害を補償するというものです。

補償対象となる機械設備には、以下のようなものがあります。

  • ビルトインの食器洗浄機、ガスコンロ
  • エアコン
  • 給湯器
  • 換気扇
  • 床暖房
  • 浴室乾燥機
  • アンテナ
  • インターフォン
  • ホームエレベーター など

なお、建物と一体化している設備が対象となるため、据え置き型の食器洗浄機やガスコンロなどは補償の対象外となります。また自然消耗や劣化などにより損害が生じた場合は、補償の対象外となります。メーカーや販売店で保証が受けられる場合も、保険金は支払われません。

上記のような要因で故障する可能性はそれほど高くないことから、新築の住宅やマンションを購入し機械設備が多いという方以外は、それほど重視しなくても良い特約かもしれません。

10. 昔の火災保険に加入している人は注意「新価保険特約」

火災保険の保険金額算出方法には、新価(再調達価額とも言います)、時価の2つがあります。新価は、火災で建物や家財が焼失してしまったときなど、新築時と同等の家を建てたり、新しく購入するために必要な金額を補償したりするものです。いっぽうの時価は、新価から経年劣化に応じた分を差し引いた金額を補償するものです。時価で火災保険を契約していると、保険金だけでは資金が不足してしまうおそれがあります

そのため、時価で契約している場合は、再調達価額で保険金が支払われる新価保険特約を付加しておく必要があります。ただし、最近販売されている火災保険は、新価での契約が一般的です。昔に長期契約で加入した火災保険が時価で算出されている場合などは、新しい火災保険に加入し直すことも検討した方がよいかもしれません。

まとめ:優先順位を考えて特約を付けよう

火災保険の特約は、パッケージ商品では基本補償に含まれていることもあります。また、保険会社によって名称が違っていたり、補償対象や内容が微妙に異なったりもします。特約を付けるときは、それぞれの中身を把握した上で優先順位を付けて、見積りを取るようにしましょう。

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株式会社 回遊舎(編集・制作プロダクション)

金融を専門とする編集・制作プロダクション。多数の金融情報誌、ムック、書籍等で企画・制作を行っています。保険、身近な家計の悩み、投資、税金、株など、お金に関する幅広い情報を初心者にもわかりやすく丁寧に解説します。

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